3DCADに適しているのはQuadroだ。
描画が崩れるからGeForceではまともに使うことはできない。
このようなことをよく目にします。
本当にそうでしょうか?
実際に試しましたか?
AutodeskのInventor Professionalを使っている私が実際に確かめましたので、その関連のことをここにまとめておきます。
公式で推奨グラボを確認してみる
Autodeskの公式HPでどれほどのグラフィックボードが必要か確かめることができます。
ここです。Autodesk公式のグラフィックボードの確認ページ
ここで試しに Autodesk Inventor / 2019 / Win7 64bit / NVIDIA と指定して検索してみたところ、推奨ハードウェアとしてグラフィックボードの一覧がずらっと出てきました。
そして全てがQuadro。
なるほど、やはりQuadroじゃないとまともに動かないのか。
…本当?
グラボの仕様を今一度確認。OpenGL?DirectX?
QuadroはOpenGLに特化しているグラフィックボードというイメージが私にありました。
実際にOpenGLに最適化されているらしいのですが、そもそも今現在InventorはOpneGLをサポートしていないようです。
今はDirect3Dをサポートしているようなので、DirectXということですよね。
この辺りのことは私は詳しくないので詳細は分からないのですが、とにかくDirectXで動いている、と。
ではOpenGLに最適化したQuadroは適していないのでは…
しかし公式の推奨はQuadro。
…どういうこと?
何を重視しているか
DirectXはGeForceは速度を重視した設計。
OpenGLは精度を重視している。
そういった違いがあり、InventorがOpenGLをサポートしていないこととは関係がないようです。
QuadroはOpenGLに最適化されているというだけでDirectXが扱えないわけではないですし、基本的には動作はします。
そして精度重視のQuadroの恩恵は十分に受けられるということになります。
パフォーマンスはトレードオフである
速度を重視すれば制度が落ち、精度を重視すれば速度が落ちるということです。
両立はできません。
ではどこを落としどころとするか。
そして速度重視のGeForceでInventorは安定動作するのか。
実際にGeForceでInventorを動かした感想
GeForce GTS250でしばらくのあいだInventorを使っていましたが、機械設計では普通に使えていました。
一般的な産業機械の作図全般で、例えばローラーコンベアのようにほとんど自由曲線が出てこないような装置の設計だと思ってください。
以前にQuadro FX3450 を搭載したワークステーションでInventorを使っていましたが、それと比べてもあまり差を感じません。
精度が落ちるというのもあまり感じませんでしたね。
強いて言えばGTS250では断面表示にしたときに少し表示がちらついたりすることがありました。
しかしそれが致命的で作図ができないということはありませんでした。
Quadroはさすがの安定感
その後Quadro K4000を手に入れ現在使用していますが、断面の表示がちらつくようなことはなく、確実に描画されているのはさすがだと思います。
角丸形状がメインの機械設計レベルでは表示に不安が残るようなことは一切ないといっても過言ではないでしょう。
ただ動作の部分で言うと、GTS250で動かしていたときも強制終了やフリーズがあったかというと、あまりなかったんですよね。
Inventorが安定してきているというのも大きいと思いますね。
ハードが原因で動作不良になるというよりも、ソフトに原因があることの方が多いように感じます。
グラボやCPUに負荷をかけていない場合のフリーズなどもありましたからね。
描画速度についてはそもそも能力が違うのであまり比べることはできませんが、爆速かというとそこまでではない、というのが正直なところです。
K4000なので期待はしていたんですが、驚くほどすごいということはありませんでした。
逆にいうとGTS250程度でも、Inventorはそれなりに動くよ!ってことです。
さすがにGTS250はもう古くて市場には出回っていません。
現行のグラフィックボードで性能が近いものというとあまり該当するものがないのですが、全てにおいて性能が上回っていて、当時の価格と比べてもほぼ同じ程度のものとなると
比較サイトで見る限り、GTX1050Tiあたりになるのかなと思います。
GeForce GTX 1050 Ti ※2020年8月現在、約14,000円
NVIDIA Quadro K4000 ※2020年8月現在、約40,000円
InventorではCPUもボトルネックに
このあたりはCADによっても違うので一概には言えないところはあると思いますが、Inventorの場合、CPUもできる限り高性能なものにしないと、そちらがボトルネックになることもあります。
例えば三面図を作成するときの2D描画はCPUの性能に左右されます。
パーツ数1000個越えの結構重めのアッセンブリを三面図に落とすときに、ELSAのSystem Graphとタスクマネージャを起動して、どこに負荷がかかっているか確認しました。
するとグラボはほぼアイドル状態で、CPUが100%使用でMAXとなっていました。
2Dの作図はマルチコアに対応してるようですね。
ちなみに私が使用しているCPUはCore i7-4790Kです。
オーバークロックはしていません。
そしてXeonですらないわけですが、Xeonの必要性を感じないというのも私の見解です。
XeonはECCメモリが使えるというのが最大の売りのように感じますが、もうかれこれ3年くらいCore i7-4790KでInventorを動かしていますが、Xeonだったら今のエラーはなかったのか?と思う場面はあまりなかったように思います。
3年間毎日さわっていたかといえばそうではありませんが、それなりにはさわっています。
自由曲線を多く扱う人とはまた違うのでしょうが、角丸メインの機械設計ではあまりトラブルは起きていません。
以前はXeonを搭載したワークステーションでInventorを使っていましたが、その時のほうがむしろトラブルは多かったように感じるほどです。
その頃のワークステーションの構成とInventorの成熟度から考えると、Xeon以前の問題だったのかもしれませんが。
その他のPCスペックも重要。特にメモリ
ちなみにですが私のPCのスペックも一応。
OS:Windows7 Pro 64bit
CPU:Core i7-4790K
MEM:32GB
システム:SSD512GB
データ:HDD1TB×2
メモリは重要ですよ。
パーツがたくさんあればそれだけメモリに読み込むファイルが増えて、メモリが足りなくなると急に重くなりますから。
重めのアッセンブリを開いたらタスクマネージャで、どれくらいInventorがメモリを使用しているか確認してみると面白いです。
意外とたくさん使っているんですよ。
そしてそこから必要なメモリ容量が見えてきます。
私は16GBを超えたことがあったので、もう最大まで積んどこうと思い、一気に32GBまで増設したという経緯があります。
SSDも効く?
OSやInventorはSSDにインストールしてますが、パーツやアッセンブリファイルは7200rpmのいたって普通のHDDに保存しています。
これも少しテストしたことがありますが、パーツおよびアッセンブリをSSDに保存して運用すればもっといろいろと早くなると思ったのですが、変化は感じられませんでした。
HDDからの読み取り/書き込み速度は処理のボトルネックにはなっていなかったようです。
少なくとも私のPC構成の場合は。
総評
処理によって負荷を担う部分が違うので、やはり総合的にハイエンド仕様にするしかないのが現状のようです。
グラボのSLI接続(複数使用)とかCPUのマルチコア/マルチスレッドに完全対応すればもっと高速化されるのでしょうが、Inventorがリリースされてかなり年月がたつにも関わらず完全対応してこないということは、なにかしらの不都合があるんでしょう。
しかしCPUは処理によってマルチコアに対応している場合もありますし、公式HPにも対応する処理は今後も追加されていくと説明がありましたので、出来る限り対応していく姿勢ではあるようです。
GeForceでの動作もそこそこ安定しているように感じますので、軽めの作業が多い人は無理にQuadroを搭載しなくても十分にInventorは使えることは私が身をもって実証しました。
軽めといっても1000個くらいのパーツからなるアッセンブリでも大丈夫でしたので、その範囲内の人って結構いるんじゃないでしょうか。
(私は2000個くらいのパーツがあるアッセンブリもGTS250でがんばってました。決して無理ではないです)
さいごに
GeForceで3DCADは無理という認識を持ちながらもずっと疑問を持ちながらやってきたので、実際に自分で試せて納得できたのでよかったです。
大事なことなので最後にもう一度書いておきます。
GeForce GTS250 程度でもInventorは動きます!
(※2020年8月 現行ですとGTX1050Tiあたり)
GeForce GTX 1050 Ti ※2020年8月現在、約14,000円
Inventorをちょっとだけ使いたいという人は無理にQuadroを搭載する必要はありませんからね。
Quadroはとても高額なので、その資金があるならCPUとメモリをできる限り良いものにしたほうが確実に幸せになれます。
NVIDIA Quadro K4000 ※2020年8月現在、約40,000円
この記事が誰かの参考になりますように。
コメント
CPUとグラボの進化に驚いています。
10年以上前のPCでメールとホームページ閲覧がメインで、時々3D_CADを使うのですが動作がぎこちなくて、ここにたどり着きました。
良いPCをお使いで、うらやましいです。
とても参考になりました。
何かのお役に立てたのならよかったです。
お読みくださりありがとうございました。
どこで調べてもQuadro推し…PCメーカーからもQuadroを選定されました。当然ですよね、Autodeskが推奨しているので、違う答えは出る訳なく。先入観でQuadroを選定していました。いざ自腹でlnventorが使えるPCを購入する際はこちらのサイトの内容が大変参考になりました。GeForceで選定し使用しましたが問題なく、大変満足しています!!
コメントありがとうございます。
お役に立てたようでよかったです。
記事にあるようになんだかんだで私は現在Quadroを使っていますが、次にPCを組み替えるときはGeForceを選ぶと思います。
Quadroは偶然手に入れる機会があったため、せっかくなので使っているにすぎません。
自腹で定価で買え、と言われたら絶対に買いません。
というか高すぎて買えません…