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溶接構造のフレームの寸法違いや「ずれ」の4つの原因と5つの対策

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角パイプやアングル、チャンネルを溶接で組み合わせて製作するフレームの場合です。
基本的に手作りなので、作業者のスキルによって精度に差がでます。
それによってどのような問題が発生するのか、作業者はどのようなことに気を付けなければならないか考えてみましょう。

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主な原因は4つ

様々な原因はありますが、主に原因となることは3つにしぼられます。
ひとつずつみていきましょう。

原因1 溶接すると材料は縮む

材質に差はあれど、溶接すると必ず材料は縮みます。
装置のフレームの場合、ほとんどがSS材かSUSです。
その場合材料を突き合わせで溶接すると、1か所につき「0.5mm」くらい縮みます。
ということは、溶接か所が多ければ多いほど仕上がり寸法が小さくなります。
それを見誤って材料を切断してしまった場合、上記の通り仕上がり寸法が予定より小さくなります。

原因2 溶接による歪み(ひずみ)が発生する

原因2で材料は溶接すると縮むということに軽くふれましたが、その延長上にあるのがこの歪みです。
直角に切断された材料同士を突き合わせで溶接してつないだとして、まっすぐな形状を保ったまま両方の材料が接合されると思いますか?
多く溶けた場所はそれだけ多く縮みますから、溶けた量に差がある場合は縮む量にも差がでます。
ということは、仮に正方形の角パイプだった場合、一番多く溶けた場所が一番多く縮み、そこを支点として材料がくの字状にわずかに曲がってしまうのです。
フレームはその集合体でできているので、あらゆるところにひずみが発生しています。
溶接接合の形状によってもひずみ方や度合いの違いがあるため、それらを理解していないとひずみだらけになってしまいます。
場所によっては歪みの修正が難しい場合もあるので、難易度が高い部分でもあります。

原因3 全ての手作業はずれる可能性がある

ほぼすべての作業が手作業なので、手違いがある可能性があります。
けがきがずれていたり、けがきがあっていても穴加工や溶接をするときにずれてしまったり、必ずミスというものは起こるものです。
ミスが発生するのはどんな作業でも同じなのですが、フレームは特に作業か所が多いため、間違いが発生する可能性高くなります。
規模にもよりますが、材料を何十本、何百本切ることだってあるでしょうし、それだけ材料を切れば溶接か所もそれと同じだけ増えます。
溶接か所が増えればけがきの本数も増えるでしょう。
このようにして、手作業がどんどん増えていきます。
フレームはそういった作業のかたまりで出来ていると認識しておいたほうがいいです。

原因4 図面がわかりにくい

フレームは複雑な形状になることがあるため、寸法値の書き込みが多くなったり、図示する線が多くなりすぎることがあります。
そうなると作業者が寸法値を見間違えることあります。
また、図面の寸法値がそもそも間違っていることもあります。
複雑になりがちな図面はこういったことがしばしば起こります。

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いずれの原因にも完璧な対策はない!?

手作業であるがゆえに、完璧というのは難しいのが現状です。
作業か所が多いので確認忘れが多くなりがちなのは言うまでもないのですが、それ以外に対策はないのでしょうか。

対策1 縮み量やひずみの具合を予想する

原因1であげた「0.5mm」縮むことがわかっていれば、それを見越してあらかじめ長めに材料を切っておきます。
また、ひずみによる材料の曲がりが予想される場合、あらかじめ曲がらないように治具なので固定して溶接します。
それでも歪みで引っ張られて材料は曲がる場合があります。
その場合あらかじめ曲がる方向とは逆の方向に材料を少し曲げておき、溶接してひずみが発生した時点で、狙った位置まで戻るようにすることもできます。
手間はかかりますが、これが一番きれいに仕上がります。

対策2 たたいたりまげたりして直す

単純にひずみで曲がったものを逆方向にたたいたり曲げたりして直す方法です。
剛性の低いものであればこれでも充分に直すことができます。
剛性の高いものはたたいた程度では戻りません。

材料に打痕がつくだけです。

また、角パイプのように肉厚が薄い材料はたたいたことでへこんでしまい、元に戻せなくなるおそれもあります。

対策3 やはり経験を積むしかない!?

あまり作業者のスキルに左右されるのは望ましくないのですが、溶接の場合はそうもいっていられません。
半自動溶接やTIG溶接の場合、まず作業が一発勝負でやり直しは基本的にできません。
そして溶かしてくっつけるという作業を連続で完全手作業で、何十、何百か所とおこなうのです。
溶接をやったことがない人はイメージできないかもしれませんが、例えば字を書くことにおきかえてみます。

何の字でもいいのですが、同じ字を連続でたくさん書いてみてください。
全ての字を全く同じようには書けませんよね?
画数の少ない字ならほぼ同じように書けるかもしれません。「一」とかですね。
しかし、それですら厳密にみたら太さや長さ、傾きが微妙に違っているでしょう。

鉛筆やシャープペンなら芯が摩耗してきたら、同じように手が動いたとしても太さが変わってしまいます。
その太さや長さの違いが溶接ビードだったとしたら…

それくらい均等に溶接することは難しいです。
熱の入り方も先に溶接したところから熱くなり始めて、後で溶接するところは先に溶接して発生した熱の影響を受けます。
なので同じように溶接していたつもりでも、あとで溶接したところが溶けやすくなります。

このようにいろいろな要因で均等に溶接できないのがあたり前なので、必ずある程度ひずみは発生します。
現実問題として字の上手下手があるように、溶接にも上手下手の差がありますから、作業者のスキルによるということは避けられません。
こればっかりは練習と経験を積むしかないでしょう。

対策4 溶接が終わったあとに必ず寸法を確認する

ひずみが様々なところに発生していて、思わぬところに寸法ずれがあることがあります。

例えばひずみによって材料が曲がってしまった場合、その材料に穴があけてあったら、穴位置も材料の曲がりにあわせて変化していることになります。
これにより同じ材料に穴が一直線上にあいていたとしても、それすらも弓なりになってしまっていることがあります。
そこに機械加工のベースなどが取り付くことになっていたら、穴径によっては取り付けができないことになります。

このように加工時は大丈夫でも、溶接によってその穴位置が変化することがあるのです。
そういったことを避けるためにも、一番手間がかかるところですが、必ずすべての寸法をチェックしましょう。

対策5 図面は枚数が増えてもいいからわかりやすくかく

一枚の図面にすべてを書きこもうとすると必ずわかりにくくなります。
複数にわけてわかりやすくするのが作業者にも優しいです。

  • 鋼材別でわけた図面
  • 溶接ベースだけの図面
  • 溶接ベースの取り付け位置だけの図面
  • 鳥瞰図だけの図面

このようにある程度の種類で分けて作成しましょう。

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まとめ

様々な原因と対策がありましたが、やはり一筋縄ではいかないことが多いのが溶接の世界です。
設計者も作業者も経験がものをいう部分がありますので、しっかりとスキルが身に付くように意識して取り組むようにしましょう。

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