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ねじ・ボルトの焼き付きの原因と対策

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ねじやボルトを締めこんでいて少しかたいな、と思ったらそこから急に動かなくなってしまったということはないでしょうか。
これこそがねじ部の焼き付きによるものです。
今回はその原因と対策について紹介します。

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焼き付きのメカニズム

何らかの原因でボルトとねじ穴の摩擦が増えると、摩擦で熱が発生し、ボルトが膨張します。
ボルトが膨張すると隙間が少なくなりさらに摩擦が増えます。

ねじが膨張→摩擦熱の増加→ねじが膨張・・・

これを繰り返すことで、結果として局部的に熱で溶けて固まり焼き付きが発生します。

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焼き付きの原因と対策

ボルトに対して横方向の力

原因

ボルトを曲げるような力が横方向の力です。

例えば部品をボルトで固定する場合に、ボルトに部品がぶら下がった状態で締め込むとします。
そうするとぶら下がった部品の重みでボルトは下方向に曲げられる力がかかります。
この状態でボルトを締めていくと、ねじとねじ穴の摩擦が増大します。

対策

とにかくボルトを曲げる力をかけないように気をつけるしかありません。
例の様に部品をぶら下げるのはやめたほうがいいですし、普通に締め込むときも横方向にボルトを押し引きし過ぎないようにしましょう。

ボルトに対して垂直方向の力

原因

強く押し込みながらもしくは強く引っ張りながらボルトの締め込みおよび緩め動作が垂直方向の力です。

装置のアジャスターボルトがいい例です。
装置の重量が過度にかかった状態でアジャスターボルトを回してしまうと焼き付きが発生します。

他にも下から上に向けてボルトで部品の重量を支えるような使い方をしている場合は、荷重がかかりすぎていると焼付く原因になります。

対策

部品の荷重をボルトにかけないように、先に部品を別の方法で固定しておくなどしましょう。
アジャスターボルトの場合では、装置の荷重をジャッキで受けておいてから回すなどの対策が有効になります。

穴のズレ

原因

部品の穴と相手のねじ穴の位置が微妙にあっていない状態で無理やりねじ込む場合です。
初めは手で回しても入るけど、ねじ込んでいくと段々かたくなるくらいの状態ですね。
あと少し締めこめば締めこみ終わるから大丈夫だろう、と思ったときに限って焼き付きが発生します。

対策

部品を取り付けていて少しでも「硬いなー」と思ったら無理にねじ込まずに、部品の穴を拡大するなどの措置をしましょう。
横着をすると絶対にいいことはありません。
急がば回れですよ。

材質の相性

原因

実は焼き付きやすい材質があります。
それがステンレスです。

ステンレスのベースは鉄ですが、そこにクロムやニッケルが添加されており、ステンレス特有の粘りのもと、さらには熱伝導率の低さつながっています。
この粘りと熱伝導率の低さが焼き付きに対して悪い結果をもたらします。

熱伝導率が低いので発生した熱が停滞しやすくなります。
熱が逃げないので、ねじとねじ穴の接触部分の熱が高温になりやすいです。
したがって早い段階で溶けはじめてしまいます。

また粘りがあるため溶けた部分がまとわりつき、余計に状態を悪化させます。

「ちょっと硬いかなー」なんて思っていると突然「カキッ!」となり、いきなり焼きついてロック、ということも珍しくありません。

電解研磨を施したステンレスは特に焼き付きが発生しやすいので注意が必要です。

対策

熱を発生させにくくするためにも、ねじ込むスピードをゆっくりにすることで効果が見込めます。
配管では特にそれが顕著です。
すばやくねじ込めばそれだけ早く熱が発生します。
ゆっくりであればたとえ熱が発生しても、熱が逃げていく時間が確保できる可能性が上がります。
ムキになってガンガン締めこんでいると、あっという間に熱々になってしまいますよ。

異物の付着

原因

ねじやねじ穴に異物が付着した状態でねじ込んでしまうと、それらがきっかけになって焼き付きが発生してしまいます。
ボルトの保管状態が悪かったり、床に落としてしまったボルトに異物がついていたり、異物はどこから付着するかわからないところがイヤらしいです。

対策

キレイに保管することはもちろんですが、特に油には気をつけたいです。
ステンレスやめっきを施したボルトは大丈夫ですが、黒染めのボルトなどは防錆剤が塗布してあり、異物が付着しやすい状態にあります。
防錆の観点から除去することもできないので、保管はきちんと行うようにしましょう。
ねじ穴も異物が疑われる場合はエアーダスターで吹き飛ばすなど対策をしましょう。

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予防する方法

様々な原因がありましたが、それらを考えても心配な場合があります。
そういった場合には予防としてあらかじめボルトに「焼き付き防止剤」を塗布する方法があります。

特にクリーンな環境でなければ、モリブデン系の焼き付き防止剤がおすすめです。
高温に耐えられるものもあり、使える場所は幅広いです。
チューブに入ったものや缶入りのもの、スプレータイプやスティックタイプなど、様々な形態で販売されています。
スティックタイプが保管や持ち運びも楽で一番便利なのですが、割高なのが少し痛いです。

クリーンな環境での使用でおすすめなのが、ニチアスのナフロンペーストです。

ただしこれらの焼き付き防止剤は、粘度がやや高く塗布した状態では異物が付着しやすくなるので、塗布したら速やかにねじ込む必要があります。
固まったり変質することもありますので、間違っても塗布した状態で保管してはいけません。

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焼き付いてしまった場合の対処法

焼き付き初期の場合

ねじ込んでいて硬くなってしまい動かなくなってしまった直後が初期です。
この状態の場合、まだ外すことができる可能性があります。

まずKURE5-56(CRC)を代表とする浸透潤滑剤をねじ部に浸透させるように吹き付けます。
しばらくおいて十分に浸透したら、まずは焼き付いて止まった方向と反対方向にゆっくりと少しだけボルトを回します。
すぐに硬くなって止まりますので、今度は逆方向にゆっくり回します。
コレを繰り返すと動かせる範囲が少しずつ多くなっていき、最後には普通に回せるようになってボルトを取ることができます。

これでダメな場合は次の対処法です。

浸透潤滑剤でもダメな場合

浸透潤滑剤でがんばっても取れないことがあるでしょう。
その場合残念ながら外すことはほぼ諦めざるを得ません。

一応最後に捨て身の方法があります。
ボルトがねじ切れるのを覚悟のうえで、インパクトレンチで無理やり外してみます。
運がよければ外れるかもしれませんが、その前にボルトがねじ切れるかもしれません。

完全に取れない状態になった場合は、まずサンダーでボルトを切断します。
続いてねじ穴に埋まってしまったボルトに、ねじ穴の下穴サイズのドリルで穴をあけて除去します。
その後タップでねじ穴をさらって復元し、エアーダスターで異物を除去します。

本当にこれは最悪のケースですので、そうならないように十分に注意しましょう。

私も装置の出荷時にアジャスターボルトを上げていて焼き付きを起こしてしまった現場に立ち会ったことがあります。
その時はもうどうにもならなくて、やはり「サンダーで切断~タップ」の一連の作業をやりました。装置の出荷という最後のところで気が緩んだのが敗因だったように感じます。
最後まで気を抜くな、ということですね。

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まとめ

焼き付きは一度起きてしまうとどうにもならなくなってしまう可能性のある恐ろしい現象です。
原因を頭に入れておき、回避できるように細心の注意を払い作業に取り組みましょう。

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